Curator's Note:
 山﨑稚子は、ファッションと彫刻を横断しながら制作に取り組んでいる作家です。山﨑はこれまでにお面をモチーフとした直立する人形の制作などを行なってきました。本展「Over the Mountains」では、旧作の人形と共にこれまでにドローイングとして制作を行なってきたナップサック、京都の山々をモチーフとした新作のタペストリーを中心に展示を構成しています。
 ドローイングとは、一般に美術用語として「線画」を意味する言葉であり、鉛筆または単色のペンなどを用いて線を引くことに重きをおいた平面作品を指し示します。また、ドローイングは、作家が制作を考えていくためのメモ書きのような役割を果たすため習作として位置づけられることが多いです。今回、展示しているナップサックも同様に、山﨑がある期間に日課として制作を行なっていたものをタペストリーのように平面作品として展示しています。このドローイングとしてのナップサックには、線画と同じように輪郭を探るようなミシンの縫い目が交差します。そして、色鮮やかなファーなどの素材がミシンによって生地に縫い合わされることで、様々な具象、抽象形態が表現されています。このようなファッションの技法を用いた「縫う」ことによって描かれるドローイングには、平面性と素材による立体感とが同居しており、イメージがモノとして現前化しています。また、今回の展示に向けて制作された京都の山と雲をモチーフとしたタペストリーには、ナップザックと同じキルト生地が使用されており、それぞれの形はフラクタル構造のように幾何学模様が幾重にも縫い合わされることによって形作られています。そこには、京都の盆地から見渡せる周囲の山々が一箇所に集約されているようです。
 山﨑はこのようなファッションと彫刻の技法とがオーバーラップするアプローチから、イメージとモノとが交差する作品を制作してきました。このような独自のアプローチから記憶や思い出といった心象をはじめ、日常の中で移ろい変わりゆくイメージを「縫う」という行為を通して留めることで、新たなイメージとモノとの関係を探索しています。
【出展作家】
山﨑稚子
【キュレーター】
岡田翔
【デザイン】
相島大地
【協力】
Rondade
遠藤祐輔
高田怜央
【会場】
金柑画廊
〒153-0063 東京都目黒区目黒4-26-7

東急東横線祐天寺駅東口:徒歩17分
JR山手線・東京メトロ南北線・都営三田線目黒駅中央口:徒歩18分

【会期】
2023年8月19日(土) - 9月10日(日) 12:00 - 19:00
開廊日:木、金、土、日、祝日 / 入場無料
※除菌スプレーを入り口に設置し、定期的な空気の入れ替えなど実施しております。
Installation View: 中島 宏樹
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